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    あの車で海に。
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      「いつかあの車で海までドライブしたいな」

       

       

      大学時代。

      彼女と同棲していたアパートの近くの国道沿いに、中古車販売店があって、

      その前を二人で通りかかる時にそんな話をよくしていた。

      それは一昔ほど前に流行った国産車で、当時はそこそこのグレードの車だったようだが、

      僕が大学生のその頃には少し古い、やや野暮ったい車ではあった。

      でも僕はむしろそこにたまらなく惹かれていて、その車で彼女と海までドライブをしたいとずっと思っていた。

      中古車とはいえ、貧乏学生だった僕に帰るシロモノではなかったのだけど。

       

      僕らの通っていた大学は海より遥か遠く、むしろ山と少しの古墳に囲まれた立地で、

      それ故か「彼女と海までドライブ」というものに強い憧憬を覚えていたのかも知れなかった。

       

      僕のそんな願いを聞く度に彼女は

      「レンタカーでもいいじゃない」

      と困ったように笑っていた。

      それはそうなんだけど…あの車だったら一番いいなってことなんだ。

      そんな話をしながら中古車販売店の横の用水路を覗くと、

      いつもソコには白い大きな鳥がいて、

      彼女にそれは鷺だと習った。

       

      鳥や花に、とても詳しい女性だった。

       

       

       

      結局その車どころか、レンタカーで海に行くこともなく

      僕らの付き合いは終わった。

       

       

      原因はもうハッキリと思い出せないけれど、今聞けばそんな大した理由じゃなかったのかも知れない。

      他の多くのことの終わりがそうであるように、恋愛の終わりもほんのすこしのズレが積み重なって積み重なった先に訪れるものだ。

       

       

      僕はもう30歳で、アレからいくつかの平凡(それはつまり刺激的という意味でもあるけれど)な恋愛を経験をした。

      しかしあの学生時代の彼女との日々は、青春時代の未熟だった自分とセットの記憶であり、思い出す度に

      独特の甘さと痛さでもって僕を楽しませてくれるもので、つまり何か特別なものだ。

       

       

       

      突然下世話な話になる。

       

       

      よく恋人同士でもない二人が一夜の関係を結んだ話に登場する

      「なんとなく流れで…」

      という言葉。

      僕にはそれは全然分からない。

      なんとなくの流れ、そんな説明できない曖昧なことで、人はそんな感じになるのか?

      一度具体的にどういう流れなのか教えて欲しいくらいだと思っていた。

       

      しかしそんな僕にもよく分からない、本当に「なんとなく流れで」そうなったとしか言えないが、

      あの彼女と海に行くことになった。

       

      きっかけはまあ御多分にもれずインターネットではあったりするのだが、

      その後のやりとりでどこでどうなったのか、とにかく海に行くのだ。僕たちは。

      とは言え泳ぐわけではない、海沿いの施設にある気の利いた店でランチでも…という話だ。

      今僕らの住んでる街は、海からそう遠くない。

       

       

      話したいことが沢山あるような、全然ないような…

      そもそも僕はどんな自分で彼女と会うのだろう。僕は変わったのか。変わってないのか。

       

      日曜日、僕は彼女を迎えに行く。

      車は、モデルは少し違うが「あの車」だ。

      1年半前に購入した。

      彼女のことは過ぎた思い出だが、この車に対する情熱はふつふつと持続していて、

      ついに我が物にしたのだった。

      独身だし、買うためのハードルはさほど高くはなかった。

       

       

      久しぶりに会った彼女はもちろん大人びていたが、基本的には変わっていなかった。

      それは彼女から見た僕にしても同じらしく、そんなことで何かホッとした。

       

      それからのことを詳しく語るのは野暮ったい。

      その日はとにかく楽しかった。

      ランチもとても美味しかった。

       

      きっと今なら、あの頃のようには…と思いはしたが、

      何かを期待してのドライブじゃない。

      ただ昔の友達と昔話に花を咲かせたかったのだ。

       

      店を変えてお茶をしている時に、何の話からの流れだったか、不意に彼女はいった。

      「今年結婚するの」と。

      もちろん僕は「おお、それはおめでとう」と祝った。

      もちろん本心で。

       

       

      何かを期待してのドライブじゃない。

      と思っていたけれど、もしかしたら違ったのかも知れない。

      いや、認めよう。

      僕はキッパリと、何かを期待していた。

       

      ただ久しぶりに彼女と会った時に、そんな考えはどこかに霧散して、

      ただ楽しく心地の良い同窓会になっただけの話だ。

       

      本心で祝って、でも僕はどこか虚しくなっている。

      矛盾だけど、人は矛盾してていい生き物だ。

       

       

      お茶が済んで、僕は彼女を送る。

      日の高いうちに帰ろう。

      そうすればあの思い出もいつか思い出になる今日も、きっと甘くて痛いままだ。

       

       

      最寄りの駅で彼女を降ろして「またね」と別れの挨拶をして、

      僕の車は何故かまた海に向かっている。

       

      「いつかあの車で海までドライブしたいな」

       

      僕はかつてそう言って、そしてそれはほとんど叶った。

      だけどもう一度一人で海に戻っている。

       

      とにかく海に向かっている。

       

       

      防波堤に車を止めて、とぼとぼ歩く。

      何も悲しいことは起こっていないけれど、とにかくとぼとぼ歩いている。

       

      向こうの方を白い鳥が飛んでいる。

      「鷺かな…」と僕は思ったが、そんなワケはない。

      きっと何かしら海鳥だろう。彼女がいれば、名前を教えてくれたかも知れない。

      白い鳥は海めがけて飛び去っていく。

       

       

      今日はいい日だった。

       

       

      まだ日が高い、この辺りをもうひと回り流そうか、

      そう思い車の下へ引き返す。

       

       

       

      「?」

       

      どうも様子がおかしい

      黒山の人だかりができて…騒いでいる…

      何か低い音や甲高い音が響いて、とにかく胸がざわざわした。

      車のもとへ急ぐ。

      心臓が激しく脈打つ、動悸が収まらない。

       

       

      狂騒の中心はやはり自分の車の辺りだ。

       

       

       

       

      人をかき分けて、僕はその光景を見た。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      おわり

       

       

      カテゴリ:- | 20:24 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
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        コメント
        きっしょい下手糞な文章…クソつまんねー記事…才能ないから死ねよガイジ
        | 植松聡 | 2017/05/30 1:13 AM |
        今週のジャンプに連載してたのあんたか
        道理でつまらんわけだ
        | ガイジ、お手!w | 2017/05/30 9:42 PM |
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